321-ん評論解析 評論解析A――構成を捉える環境世界大おお井い 玄げされた世界が、それぞれの「環境世界」だ。近代になって環境と環境世界の区別をより平明に例示した功績者はヤーコブ・フォン・ユクスキュルだろう。れが食べられない物体ならそれから離れてゆくが、死んだ腐敗バクテリアのように食べられるものならそれを食べる。5そこにある水みず苔ごけの生えた小石、揺らぐ水草や泳ぐ魚などはゾウリムシにとって存在しない。つまりゾウリムシにとって水環境は、食べられるものと食べられないものによって構成された環境世界だ。ん棲すんでいる。ある日、子どもたちが来てスルメを餌に釣り上げていたが、遊び終わるとザリガニをまた元に戻して帰っていった。夫婦らしい高齢男女がザリガニを見ており、男は女に子どもの頃手捕りした経験を語っていた。しかし翌朝コサギがやって来てザリガニを飲み込んでいた。同じザリガニのいるせせらぎでも遊びの場、回想の対象、そして食物を漁あさる場、生物がそこに見つける意味はそれぞれに違う。生物は同じ環境に生きていても、その環境に見いだす意味は、それぞれ違う。環境に見いだした意味によって構成例えば、ゾウリムシは、淡水中でその体表に密に生えた繊毛を動かして浮遊している。何かに突き当たるとき、そ同一の環境では種々の生物が共存する。近所の遊歩道に沿って流れる人工のせせらぎにアメリカザリガニがたくさただし、ヒトは世界をコトバで分節する点で他種生物と異なる。4丸まる山やま圭けい三ざぶ郎ろうの指摘のように、生物は連続した環境巻頭1 評論を読み解く評論解析A2 解析マスター解析マスター②一九三五(昭和10)年~。医学博士。京都府生まれ。本文は「環境世界と自己の系譜」(二〇〇九年刊)によった。1058内容解説資料 対比構造に着目する38
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