言葉の力信まこと大おお岡おか*51評論単元:〈知〉の深化 1 「出来合いの大げさな表現と正反対の方向」とは、どういう方向か。言葉の皮肉なあり方の一つに、大げさな言葉は我々をあまり感動させず、つつましく発せられたささやかな言葉が、しばしば人を深く揺り動かすという事実がある。私は日頃詩を書いたり、散文をつづったりしているが、いずれの場合においても最も難しいのは、自分が一番力を入れて書こうとしていること、いわば思い詰めて考え、人に伝えたいと思っている一番大事なことをどう表現するかという問題である。強調したいことは最上級の言葉で語りたいと思うのが自然の要求であって、その誘惑は強い。けれども、私たちが採っている最上級の表現というものは、皮肉なことに、たいていの場合は出来合いのものである。概念的で通念によって汚され、干からびた表現である場合がほとんどである。その例証は政治家たちの用語の中にいくらでも見いだすことができる。最も明瞭に人の心にたたき込みたい思いを表現するのには、出来合いの大げさな表現と正反対の方向へ向かって道を探さねばならない。すると、その瞬間から、何が最もそ「知の深化」について評論での学習を通じて得た知見を生かし、その評論の内容理解をさらに深めていく際に活用できる文章を、現代小説3本や現代詩など、文学作品を中心に6教材配置しました。10342424評評論論ⅠⅠ
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