ょくまず、今から約百年前の二十世紀初頭、近代には人口が急増したことによって「胃袋の増大」が始まり、「農村」の胃袋に加えて「都市」へと流入する胃袋が増えた。外食の機会が整えられ、工場や企業が労働者の胃袋に関与するようになった。次に戦争によってその胃袋は国家によっても管理される一方、十分に満たされないという苦難を経験した。そして二十世紀半ばから始まる戦後、人びとは戦時期以上の食料難にあえいだが、しだいにそれが解消され、高度経済成長期に突入すると、まもなく飽食の時代が到来した。食べることそのものから満足感を得ていた時代から、たくさんの食べ物の中から何を食べるかを選択しうるかで満足感を得るような時代へと移り変わったと言えよう。そして、あふれるような食べ物の中で、もはや胃袋を満たすことに困難が伴うことは少なくなった代わりに、一方では「個食」や「孤食」という現象が見られるようになり、食をめぐる風景は一変した。二十一世紀への転換期には、食べ物があふれる「飽食」の時代から、食べることの意味が失われる「崩ほ食し」の時代へと突入し、食べ物や食べることを日常生活の中心として絶えず考え続ける状況を、多くの人びとが共有することが難しい時代となった。また、食べ物は成分、栄養素という言葉や数字に置き換え可能な単なる物質として理解されるようにもなり、食べることに与えられる意味も合理化、科学化、単純化される傾向にあ125*う評論単元 1個食にそろっ 家て族いがて同もじ、そ食卓れぞれ別々のものを食べること。2孤食をする 一こと人。きりで食事1510156内容解説資料評評論論ⅣⅣ20
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