令和8年度用 探求 現代の国語 カタログ
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〈知〉のコミュニティへ*デフォルメ 対象となるものを変形させ、強調して表現すること。えているつもりで、実際には自分をどんどん打ち消して、もうまったく別物にしてしまう。他人と同じふりをしないと他人といられないのなら、それは、その人はそこにいる必要がないってことだ。そんな生き方は悲しすぎる。言葉は簡単に、すべてを簡略化して、まったく違うものにしてしまう。クラスメイトと毎日昼食を食べて、音楽の話をするようになった、それだけでよかったのに、その関係性に「親友」と名付けてしまう。それだけで、きっとなにかが失われていた。自分だけの感情や関係を、他人に伝えるため、共有するため、たった一つの不思議な形をしていたそれらを、既存の概念に押し込んで、余計なものを削り落とした。そうでもしないと他人に伝えられないから。伝えられなかったら、「意味不明な子」って切り捨てられちゃうから。そう必死になっていた。けれど、実際のところ切り捨てたそれらは本当に「余計なもの」だったのか?かってもらおうとしている一方で、自分の存在を否定し続けていた。そして、そうやって捨ててきたものを、人は永遠に思い出せない。懸命に他人にわ5紙面紹介 ﹁わからないぐらいがちょうどいい﹂教科書   109 わからないぐらいがちょうどいい教材紹介「わからないぐらいがちょうどいい」 最果タヒ1313わからないものを、わからないまま、受け止めたい―「わかりやすいこと」「伝わりやすいこと」が求められがちな現代にあって、言葉や人との向き合い方を問いかける最果タヒさんの文章を冒頭に掲載しました。

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