令和8年度用 新 現代の国語 ダイジェスト版
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問「からす」は、どのような役割を果たして4 いるか。不気味な雰囲気をもたらす役割。▽10行目に「からすは、もちろん、門の上にある死人の肉を、ついばみに来るのである」とあるのに着目する。からすは、羅生門周辺の荒廃ぶりを端的に表す小道具となっている。8 問「小さな余波」という表現から読み取れることを挙げよ。都の衰微の程度が非常に大きなものだったこと。/下人が解雇されたのは、下人自身の責任ではないこと。/下人は、社会全体から見ると小さな存在でしかないこと。2 発問例 読解のポイントを押さえられる発問と、その下人解答を示しました。の置かれている状況と人物像をつかむ︒* 下人の境遇をまとめよ。仕事も住む家もなく、途方に暮れている。▽「その主人からは、四、五日前に暇を出された」(一六二・5)、「長年、使われていた主人から、暇を出された」(一六二・6)、「行き所がなくて、途方に暮れていた」(一六二・11)などの部分に着目する。* 下人の人物像をまとめよ。繊細な感受性を持った若い青年。きりぎりす原文では□蟋□蟀□。古語の□きりぎりす□は、現代の□こおろぎ□の意。平安朝が舞台なので□こおろぎ□とする説と、丹塗りの円柱との絵画的対比から緑色の□きりぎりす□と見なす説とがある。□夕冷えのする京都は、もう火桶が欲しいほどの寒さである□(二〇七・15)という季節であることを考えると、□こおろぎ□と考えるのが自然であろう。市女笠ここでは、□市女笠をかぶった女□を指す。一つの事物の部分・付属物を挙げてその事物を示す比喩表現、すなわち□換喩□である。次の□揉烏帽子□も同じく、□揉烏帽子をかぶった男□の意味である。仏像や仏具を打ち砕いて、……は、仏像や仏具を打ち砕いて薪の料に売ったり、死体を羅生門にうち捨てたりしている。近代科学を信じる今日の我々でさえ、(たとえ無宗教であっても)こういう行為にはためらいを感じる。ここには〈モラルの不在〉が語られている。しかし、それにもかかわらず、下人一人だけがいまだにモラルのかけらを引きずっており、盗人になることを逡巡している。それがごまをまいたように、はっきり見えた焼け空を背景に飛ぶからすの黒い影、という色彩の対照が不気味さを強調している。教科書(一六〇・1~一六四・8)□□□□教科書(一六〇〜一七一)論理を羅生門荒廃した京都の町で赤い夕組み立てる●展開のポイント1 第一段落を音読し︑舞台背景を読み取る︒2 問「広い門の下には、この男のほかに誰もいない」のはなぜか。天災や人災によって洛中が寂れ、羅生門が荒れ果てていたから。▽「なぜかというと、……なってしまったのである」(一六〇・6〜一六一・3)の部分を簡潔にまとめる。3 問「きりぎりす」は、どのような役割を果たしているか。・季節(秋)を知らせる役割。9答84答答3答指導資料(小説)                                                   6・9 ・時間の経過を示す役割。▽「丹塗りの柱にとまっていたきりぎりすも、もうどこかへ行ってしまった」(一六四・1)とあることから、時間の経過を示す役割を持っていることを読み取る。このように、小説の中でそれとなく場面の状況や作中人物の心理などを示す言葉を「小道具」と呼ぶ。問「京都」および「羅生門」は、当時どのような状況にあったのか。▽九七ページ「﹃書く﹄活動へのステップ」参照。一六一ページ一六二ページ一六〇ページ一六〇ページ一六一ページ語句の解説羅生門①授業展開例(発問と解説)問答問答94

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