教材に関する設問例を、「標準」「発展」の2レベルでご用意いたしました。データは〈一太郎・ワード・PDF〉の三つの形式でご用意しています。標準問題地上では、常にどこかの都市が封鎖され、どこかの国境が閉じられている。目に見えないウイルスは、海越え山飛行機雲が引かれなくなって久しい空を、何度となく■星星のの目目でで見見るる■】次の文章を読んで、後の問いに答えよ。(配点二〇二〇年一月以降、越えひとりで旅するような力は持っておらず、人間を乗り物にして世界に広がってゆくものなので、人という乗り物の動きを制限して、その拡大を抑制することは、多くのaエキビョウを生き延びた先祖たちが残してくれた、経験的な①生き残りの知恵だ。「ちょっと前までは、何も考えずに、あそこを飛んでいたのよね。」と思いながら、仰ぎ見る。人々は大地に固定され、引かれた境界線の枠の中でのb試行錯誤にc右往左往をしているが、その上空では、大きな雲が形を変えながら、人間の境界線を悠々と越えて流れていく。雲だけではない。窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、リン、カリウム、セシウム、森林火災や火山噴火の煤と灰、マイクロプラスチック――数えきれない物質を含む、目には見えないd粉塵も、大気の風に乗って悠々と流れていく。命を支えるものも、命を脅かすものも、流れていく。②それらは、どこかで雨粒に紛れて地上に落ち、地中にeシントウし、あるいは、新たな粉塵となって舞い上がり、延々と地球の上空を流れ続ける。誰がどう地上に線引きをしようと、これらの目に見えないものを、自分の領域内に囲い込んだり、領域内から排除したりすることはできないのであって、地球上に暮らす者は、その流れていく「見えないもの」に命を預けている運命共同体であることを、ふいに実感する。「見えないもの」とともに空を飛んでいたときではなく、大地に自分を固定して空を見上げたとき、初めてそれに気づくというのも、何だか不思議だけれど、最も近しいfビサイなものに気づくためには、目を近づけるミクロの視点よりも、遠く離れた望遠の視点、マクロの視点が必要なのかもしれない。実際、今、私たちの命を支えている大気の成分や、微細な粉塵一粒一粒の行動をgコクメイに追っているのは、宇宙空間に浮かぶ「星の目」だ。地上から約四百キロ上空の宇宙空間を秒速七・七キロの速度で飛行しているISS国際宇宙ステーションの目や、各国が打ち上げている人工衛星の目。それらが、地球の表面を覆う薄い大気の層を流れる「見えないもの」の行動を、観察し続けている。そして地上では、多くの科学者が、その目から送られてくるデータを解析し、地球環境の複雑な仕組みの謎を解きながら、そこに暮らすものの命への影響を分析し、ほんの少し先の未来を予測している。アフリカのサハラ砂漠から舞い上がった③紅砂と呼ばれる粉塵は、貿易風に乗って大西洋を渡り、五千キロ先の世界最大の熱帯雨林アマゾンに到達する。その様子を、宇宙衛星の目を通して観察し解析しているのは、NASAアメリカ航空宇宙局の大気科学者ホンビン・ユーの研究チームだ。彼は、多様性の宝庫であるアマゾンの木々の繁栄が、サハラから運ばれる紅砂に含まれる栄養素に依存していることを標準問題・発展問題【評価問題(評論)50点)72
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