単元の包括的なねらいと位置づけ、学習する教材の構成と特徴を示しました。ご授業にあたっての基本方針を立てる際などにご覧ください。指導資料評価問題・ワークシート一覧/指導資料(評論) 「視点を変える」といっても︑どのような視点をどう変えるのかという点で︑さまざまなアプローチが考えられる︒本単元を構成する三作品のうちで︑まず阿部雅世の「星の目で見る」は︑空間的な視点の転換であり︑地球や人類を俯瞰的に見直すという方向性を持っている︒さらに︑新型コロナウイルスのパンデミックやデジタルデバイスの普及という現代の状況を︑少し異なった観点で捉えるという特徴がある︒続く小川洋子の「世界の周縁に身を置く人」は︑人物に対する視点の転換が特徴である︒「おそ松くん」と「アンネの日記」という意外な取り合わせにも興味をそそられようが︑その脇役に注目して︑アンネの姉マルゴーのような「じっと黙っている人」に向ける筆者の視線は︑温かく︑しかもユニークである︒さらに︑村田沙耶香の「カルチャーショック」は特殊な設定の小説である︒「現代の国語」の中で小説を扱うこと自体が︑視点の転換として意義があるうえ︑タイトルの通り︑異文化体験をテーマにした作品であり︑異なる文化や他者に向ける視点を考え直すきっかけとして扱いたい︒期せずして女性筆者三人の文章が並んだが︑硬直したものになりがちな男性の思考に対し︑女性の柔軟な発想が視点の転換をもたらすとも考えられよう︒また︑長くヨーロッパを拠点にして活動する阿部雅世︑フランスの芸術文化勲章シュバリエを受賞し︑英国ブッカー国際賞の最終候補にノミネートされた小川洋子︑独特の作風が評価されて海外でも翻訳が出版されはじめた村田沙耶香という︑国際的な活躍が目覚ましい筆者であることも︑生徒への刺激となるだろう︒単元のねらい・人単材が元多のく構育つ成ことで︑閉塞的とも思える昨今の社会を積極的な本教科書では︑これまで︑導入的な位置づけの「︿知﹀のコミュニティへ」に続いて︑事実や考えなどを話し︑そして書くことの第一歩として「言葉に表す」の単元があり︑その後は「読む」活動を中心に︑論理展開を意識しながらも大まかに「筋道をつかむ」ことを試み︑さらに「評論解析A」では︑構成を意識しながら精密に読解することの意識づけを行ってきた︒その後に位置する本単元は︑「視点を変える」ことをテーマとし︑精密な読みを心がけた直前の「評論解析A」とは対照的に︑視点を転じて発想や考察を広げ深めることを目指し︑そうした視点の転換の例となる作品を読み︑さらに︑視点の転換よって得た考えを書くという︑総合的な活動を行う︒六三ページには︑その「学びの位置づけ」を「普段と異なる視点から物事を見て︑固定されがちな考えを揺さぶってみる︒」と示している︒本単元に臨むのは︑高校入学からさほどの時間を経ていない高校一年生であろう︒若い彼らの発想力や思考力は︑本来︑柔らかく豊かであるに違いない︒しかし一方で︑社会に出る準備として︑その中の当たり前や常識を身に付けることが多くなる時期でもある︒そのために︑ともすれば︑「固定されがちな考え」に陥ることもあるだろう︒しかし︑ここで︑自らの柔軟な発想や思考を活かし︑そうした考えとは別の角度から物事を見て考える意識を身に付ければ︑今後さまざまな困難に出会うかもしれない生徒自身が人生を切りひらくための糧になるはずである︒さらに︑そうした視点を有する方向に変えるきっかけになることも期待される︒単元のねらい単元の構成指導資料(評論)星の目で見る世界の周縁に身を置く人カルチャーショック61視点を変える
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