紙面紹介 272 次の文章は、美学者の伊藤亜紗氏が、視覚障害者の方へのインタビューを通じて、目の見えない人の空間認識のしかたに迫ったものである。 私たちは、日常生活を送る中で、五感から多くの情報を得ている。その中でも視覚が受け取る情報が、全体の八割を占めると言われる。この視覚という感覚を除いたとき、私たちはどのようにして世界を捉えるのか? 今見ている世界はどんな別の顔を見せるのか? 「見えない人」は、この「世界の別の顔」を感知し、当たり前のようにその世界で生活している。彼らの空間認知のしかたを追体験し、「世界の別の顔」を知るプロセスは、「展望を描く」際の基本姿勢でもある、異なるしかたでものを見ようとすることの重要さを教えてくれる。12木きの下した路みち徳のりさん 一九七九年生まれ。生まれつき弱視で十六歳のときに失明。現在は全盲。難なん波ば創そう太たさん 一九六八年生まれ。三十九歳のときに交通事故で失明し、全盲。《本文で紹介される「木下さん」「難波さん」について》学びの位置づけ(二七一ページ)目の見えない人は世界をどう見ているのか伊い藤とう 亜あ紗さ10展望を描く教科書教材紹介「目の見えない人は世界をどう見ているのか」 伊藤亜紗39視覚障害者の方へのインタビューを通じて、私たちが普段何気なく見ている世界と、見えない人が「見て」いる空間との認識の違いについて考えます。10展望を描く/「目の見えない人は世界をどう見ているのか」
元のページ ../index.html#41