評論解析全12本の評論解析単元を通じて、文章を正確に読み解く8つの手法「解析マスター」を効果的に習得できます。「評論解析A・B(8本)」は1,000字程度の見開きで構成し、1時間で授業が完結します。多彩なテーマの文章を採録しており、多読指導としても活用できます。見開き構成1時間完結特 長活用事例月1題、15分程度で読ませ、言語活動として要約させたり意見文を書かせたりしています。(I高校)長期休暇中の課題とし、考査範囲に入れました。ワークシート を活用できたので、自学でも取り組ませることが出来ました。 (G高校)長期休暇前の空いた時間を活用し、短時間で行えるグループ学習に使用しています。いつもと異なる雰囲気で楽しく授業ができます。 (T高校)授業で自学で休暇前に54一九五八(昭和33)年~。グラフィックデザイナー。岡山県生まれ。本文は「デザインのめざめ」(二〇一四年刊)によった。マヨネーズの穴から原はら 研けん哉や解析マスター① 主要な見解をつかむ 巻頭1 評論を読み解く 解析マスター評 論 解 析 A-1 マヨネーズのノズルの穴の形。実にささいなものだがこれが野菜の上のマヨネーズの姿を決めている。円か星型か、細長いスリットか、あるいは小さな穴の集合か。それによってサラダの上のマヨネーズの様相は、棒状、デコレーション状、きしめん状、ちぢれそば状などに変化する。 「マヨネーズ」ができるまでのプロセス。それは石油の採掘に始まる気の遠くなるようなものづくりの道筋をたどっている。 大地に巨大な石油採掘施設が構築される。その中でごう音を響かせながら、ポンプは地中から原油をくみ上げる。それはパイプラインや貯蔵タンクを経由し、港で巨大なタンカーへと移され、地球規模の距離をゆっくりと移動する。やがて石油化学コンビナートに運ばれ、それは精製されていく。そしてそのうちのごくわずかがマヨネーズの容器になる。 一方、中身の生産では鶏が活躍している。彼らは養鶏場でひたすら毎日飼料をついばみ卵を産む。その卵は食品工場に運ばれて、おそらくは巨大なタンクに投入され、油やその他の成分と混ぜ合わされ、うすベージュの半固形の食品に仕上げられていくのだ。 石油から生まれる容器と、鶏から生まれた食品は工場で出会い、中身が容器に注入され、封印され、薄いビニール1510評論解析A―構成を捉える評 論 解 析55 マヨネーズの穴から筆者の主要な見解が述べられている形式段落を探し、その段落の最初の一文を抜き出せ。「マヨネーズの穴」と「デザイン」の共通点をまとめよ。まとめ解析の袋に収まってようやく「マヨネーズ」という製品に仕上がっていく。 さらにこれはテレビコマーシャルなどを通じて、宣伝される。きれいな映像と広告コピーが野菜を食べる喜びを説く。その勢いに押されてマーケットを通過し、それはついに運命の食卓へと進む。皿の上の野菜に照準を合わせ、いざ成就、というマヨネーズの一生にとっての決定的な瞬間を演出するのが穴の形。 壮大なプロセスの果てに「ぴゅっ」と絞り出される小さな結末。勝負は一瞬である。まあ、本当にたわいのないことだが物事の性質は、このような一瞬に左右される。 考えるに、デザインはある一面ではマヨネーズの穴のようなものだ。生産という遠大な営みの最後の最後の局面で人類のささやかな幸福のためにひと工夫する。ほんのひと工夫だが、そこで物事は品格を得たり台無しになったりするのだ。 もちろん、マヨネーズの穴はデザインの象徴ではない。ただ、しっかりと目を凝らすなら、そこから人類の営みの一端をのぞくこともできる。デザインの小さな哲学はそういう場所に潜んでいる。 スリット slit(英語)。切れ込み。裂け目。11520評論解析A―構成を捉える見開き完結8本評論読解を通じて文章を正確に読み解く手法を学べます。解析マスター!授業、自学でご使用の際に役立つ、豊富なワークシートのデータをご用意しております。詳しくは60ページへ08
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